研究 成形加工

成形加工について

成形加工には、様々な成形加工法があり、またその工程も多種多様なものがあります。杉本研究室では、成形加工にレオロジーを応用し、問題点を解明するための研究を行っています。

押出成形

新規材料・高精度成形加工技術を支えるレオロジー

プラスチック材料のレオロジーを成形加工へ活かそうとしたときに非常に厄介なこと、

それは、

プラスチック材料のレオロジー特性。

加工条件(温度、圧力、変形様式、変形量、変形速 度、時間など)に依存するだけでなく、
材料自体の特徴(分子量、分子量分布、分子構造、添加物、組成、構造など)によっても大きく異なる事です。

本研究室では、実際に小型の成形機を用いて
① 成形加工プロセス中に、プラスチック材料がどのような条件下(雰囲気,圧力,温度など)で、どのような流動(せん断、伸長など)を、どの程度(変形量、変形速度、流速など)受けるかを把握する。
② それらの結果を受けて分子量や分子構造の調整、添加物の添加、ポリマーブレンドなどといった手法を用いた材料設計を行っています。

フィルム成形性の少量評価と可視化技術

少量で押出性を評価できる装置の開発

混練性

粘度測定

多層フィルム成形性

超多層押出成形

押出機〜フィルム成形〜

押出機

多層フィルム

多層フィルム

口金(ダイ)内可視化技術

可視化技術

エレクトロスピニングとは?

エレクトロスピニングとは、プラスチック原料に電圧をかけて紡糸する技術で、応用例として、超高性能フィルター、細胞培養地、ドラッグデリバリーシステムなどに利用されています。シリンジ内に高分子溶液や溶融体を入れ、針先に高電圧を印加すると高分子試料が収集版に向かって伸長され、収集板に不織布として極細繊維が作製されます。繊維径がナノサイズのナノファイバーは超高性能フィルターや人工臓器、細胞外マトリクスをはじめ、医療分野など多岐にわたる応用が期待されています。杉本研究室では、より細い繊維や中空繊維の作製などを目的としています。

エレクトロスピニング
図:エレクトロスピニング装置
不織布
図:エレクトロスピニングで作製した不織布
ナノファイバー

ブロー成形とは

現在、プラスチックは金属材料などに代替し生活に必要不可欠のものとなっている。これはプラスチック材料が軽量・高強度であるからだけではない。安価で成形品形状の自由度が高く、生産性がよいために大量生産に適した材料であることもある。また、製品の多種多様化にともない成形法も数多く開発され、射出、押し出し、圧縮、ブローなど各種方法がある。ブロー成形は容器やボトルを効率良く成形できると言う点に最大の特徴があり、中空成形法とも呼ばれている。 図1に示したように、ブロー成形は4つの過程を経て最終的な成形品が得られる。

ブロー成形概略図

ブロー成形

1) 溶融可塑化
押出過程ペレットと呼ばれる粒形状の高分子材料をスクリューで溶融・混練する。

2)パリソン形成過程
スクリューで溶融・混練した高分子材料をパリソンと呼ばれる円筒状高分子溶融体として二重円筒型ダイから押し出す。

3)パリソン膨張過程・冷却固化過程
パリソンを金型で挟み、その中に圧縮空気を吹き込む。そして、膨張したパリソンは金型壁面と接触し、成形品の形状となる。

4)冷却・取り出し過程
膨張が完了したパリソンを温度制御された金型により冷却する。その後金型を開き固化した成形品を取り出す。

ブロー成形の問題点

ブロー成形の問題点は、成形品の肉厚に分布が生じることである。その原因として考えられることは2つある。1つはパリソン形成過程における図2に示したようなスウェル・ドローダウンの影響である。スウェルとは、パリソンの直径と肉厚が増大する現象である。ドローダウンとは、パリソンの自重により、パリソンが引き伸ばされ現象のことである。実際の成形においてはこの2つの現象が混在してパリソンが形成されるためパリソンの形状が不均一になり成形品肉厚分布に大きく影響している。もう1つは、パリソン膨張過程における金型とパリソン間で生じるスリップが大きく影響してくると考えられる。よって、このスリップを大きく生じさせることができれば肉厚分布は少なくなると考えられる。

スウェル

ブロー成形・研究概要

1)PS/Whisker複合材料のブロー成形における変形と配向

現在成形加工では無機粒子充填材料が盛んに用いられており、ブロー成形においても例外ではない。無機粒子充填系材料の力学的性質は粒子の配向に影響される。しかしブロー成形品中の無機粒子の配向分布は未だに解明されていない。そこで本研究室ではブロー成形品中の無機粒子の配向分布を材料が受ける変形の観点から解明した。

2)一軸伸長粘度のひずみ硬化性と滑剤添加がブロー成形品に及ぼす影響

一軸伸長粘度のひずみ硬化性の異なる材料を用いて成形し、成形品肉厚分布からその影響を検討した。その結果、一軸伸長粘度のひずみ硬化性が成形品肉厚分布に影響を与えるという結果を得た。また、滑剤添加によっては少量の添加によっても材料の物性が大きく変化するため一概に肉厚分布から滑剤の影響があるとは言えない。しかし、金型の形状を変えることによって滑剤添加による影響は現れると考えられる

コンピューターシミュレーション

近年コンピュータの計算速度の向上は目覚ましく、コンピュータシミュレーションによる解析が非常に重要なものとなっている。本研究室では、分子レベルでの高分子の振る舞いの分析やポリマーの流動特性(伸長レオロジー、エレクトロレオロジー、流動誘起結晶化)をコンピュータシミュレーションにより解析し、それを応用へ活かす事を目標として研究を進めています。